閉鎖会社(Close Company)制度:スタートアップ投資に適した法形態
世界経済のデジタル化が加速する中、台湾は従来のハードウェア製造大国という地位に加え、AI、IoT、バイオテクノロジーの先端技術分野におけるイノベーションのハブとしての地位を確立しつつあります。台湾政府が推進するアジア・シリコンバレー計画は、スタートアップ企業が生まれやすく成長しやすい法的土壌を整備する国家戦略を含んでいます。日本企業にとって、地理的・歴史的に近接する台湾は、有力な市場であると同時にR&Dパートナーや投資対象としての重要性を年々増しています。ただし、国境を越えた資本提携や合弁事業の組成では、法制度の差異が予期せぬリスクや機会損失を招く可能性があります。
本記事は、2015年の会社法改正により導入された閉鎖性股份有限公司(以下「閉鎖会社」)について、立法趣旨から実務的な運用、日本法との比較、最新の解釈通達や判例に至るまでを解説します。
目次
台湾の閉鎖性股份有限公司の制度趣旨と法的定義
導入の背景:硬直的な旧会社法からの脱却
かつて台湾の会社法制は、大規模な資本集約型産業を念頭に設計されていました。資本の充実と株主平等が至上命題とされ、株式の額面規制や厳格な機関設計が求められていました。知識集約型のスタートアップ企業においては、創業者の持ち分維持、迅速な意思決定、柔軟な資金調達こそが生命線です。従来の硬直的な法規制は、シリコンバレー・スタイルの急成長を目指す企業にとって足かせとなっていたのです。
台湾立法院は2015年6月15日に会社法改正案を三読通過させ、同年9月4日に施行しました。同改正により、第5章第13節(第356條の1以下)として閉鎖性股份有限公司の規定が新設されました。米国の閉鎖会社法制(Close Corporation)や日本の会社法を参考にしつつ、契約自由の原則(定款自治)を大胆に取り入れることで、スタートアップ企業や同族経営企業(ファミリービジネス)に適した法的インフラを提供することを目的としています。台湾法制史上、最もドラスティックな規制緩和の一つと評価されています。
法的定義と要件
台湾会社法第356條の1によれば、閉鎖性股份有限公司とは、株主の人数が50人以下であり、かつ定款において株式譲渡に関する制限を設けている株式会社を指します。日本の公開会社でない株式会社が定款で譲渡制限を設けている会社と定義されるのと同様に、台湾の閉鎖会社も閉鎖性を定款で明示することが求められます。ただし、台湾の一般の株式会社(股份有限公司)と異なり、閉鎖会社は法律上明示的に株主数50人以下という数的制限が課されている点が最大の特徴です。
株主数の計算において、台湾経済部(日本の経済産業省に相当)は柔軟な解釈を採用しています。原則として株主名簿上の人数を基準としますが、信託契約等により実質的な株主が多数に及ぶ場合の取り扱いについては、個別の事案に応じた判断が求められることもあります。この50人という数字が、閉鎖会社としての法的地位を維持するための絶対的な要件であることが重要です。増資や相続等により株主数が50人を超えた場合、会社は一般の株式会社への変更登記を行わなければなりません。
日本法との比較:位置づけの明確化
台湾の閉鎖会社制度を理解する上で、日本の会社法概念との対比は非常に有効です。まず、日本の譲渡制限会社との違いについてです。日本では、全ての株式会社が定款で譲渡制限を設けることができますが、株主数の上限は法律上規定されていません。実務上は数名の株主しかいない会社が大半ですが、法的には1000人の株主を持つ譲渡制限会社も存在し得ます。一方、台湾の閉鎖会社は50人という上限が明記されており、より小規模かつ人的関係の濃い組織を法的に強制しています。株主間の信頼関係が崩れた場合のデッドロック(膠着状態)を解決するメカニズムが、一般会社よりも重要になることが言えるでしょう。
次に、日本の合同会社(LLC)との違いです。台湾の閉鎖会社はあくまで株式会社(Company Limited by Shares)の一種です。出資者は社員ではなく株主であり、有限責任を負います。日本の合同会社は持分会社であり、内部自治が広く認められる反面、株式市場への上場(IPO)を目指すには株式会社への組織変更が必要です。台湾の閉鎖会社は、スタートアップ段階では合同会社のような柔軟な運営が可能でありながら、法的性質は株式会社であるため、IPOに向けた資本政策の連続性が保ちやすいというメリットがあります。
なお、Close Companyは閉鎖されたというネガティブな意味ではなく、株主間の距離が近い(Closely Held)ことを意味します。日本の非公開会社(Private Company)という呼称とはニュアンスが若干異なります。
台湾の閉鎖会社におけるスタートアップに最適な資本政策

閉鎖会社の最大の魅力は、資金調達と支配権維持のバランスを高度に設計できる点にあります。ここでは、日本の実務家が特に注目すべき無額面株式、種類株式、労務出資について詳述します。
無額面株式の活用
従来、台湾の会社法では額面株式が原則であり、額面(通常は10台湾ドル)未満での発行には厳しい制限がありました。債権者保護の観点から資本維持の原則を厳格に適用していたためです。閉鎖会社制度では、無額面株式(No-par value shares)の発行が全面的に認められました。その後、2018年の会社法改正により、一般の株式会社でも無額面株式の発行が可能となりましたが、閉鎖会社制度はその先駆けとして導入された経緯があります。
無額面株式を採用することで、会社は発行価格を自由に決定できます。スタートアップの資本政策において決定的な意味を持ちます。例えば、創業初期において、創業者には極めて低い価格(例:1株1元)で株式を発行し、その後のシリーズAラウンドで投資家には高い価格(例:1株100元)で発行するといった柔軟な設計が可能になります。
額面株式の場合、額面未満での発行(ディスカウント発行)には複雑な手続きが必要でしたが、無額面株式であれば、取締役会の決議のみで迅速に発行価格を決定できます。日本法でも無額面株式は一般的ですが、台湾におけるこの規制緩和は、ベンチャーキャピタル(VC)からの出資を受け入れる際のバリュエーション調整において画期的な変化をもたらしました。
種類株式による支配権維持
スタートアップが外部資金を受け入れる際、創業者の持株比率が希薄化(ダイリューション)し、経営権が脅かされることが常に懸念事項となります。閉鎖会社では、極めて柔軟な種類株式(特別股)の発行が認められています。
複数議決権株式(Multiple Voting Rights)
1株に対して複数の議決権を付与する株式であり、例えば創業者の持つA種株式は1株につき10個の議決権を有するといった設計が可能です。創業者は少ない出資比率(例えば10%)でも過半数の議決権を維持し、経営の安定を図ることができます。日本では単元株制度を利用して擬似的に議決権の重み付けを行うことは可能ですが、直接的に1株n議決権とする種類株式の発行は、上場企業では制限される傾向にあります。台湾の閉鎖会社では、非公開であることを前提に、より自由かつ直接的な設計が許容されています。
拒否権付株式(Veto Rights / Golden Shares)
特定の重要事項(合併、定款変更、取締役の解任など)について、拒否権を行使できる株式です。VCなどの投資家が保有することで、マイノリティ出資であっても会社の重大な決定に関与することが可能となります。逆に、創業者が保有することで、敵対的買収を防衛することも可能です。日本の黄金株に相当しますが、台湾の閉鎖会社法制では、対象事項を定款で極めて具体的に定めることができます。
取締役・監査役の選任権付株式
特定の種類株主が、一定数の取締役または監査役を選任できる権利を付与する株式です。ベンチャー投資において、リードインベスターが取締役を派遣する際の根拠として利用されます。日本法における取締役選任権付種類株式と同様の機能ですが、台湾では閉鎖会社特有の簡素な機関設計と組み合わせることで、より強力な支配ツールとなります。
さらに、種類株式から普通株式への転換比率についても、定款で自由に定めることができます。マイルストーン達成度合いに応じたラチェット条項(Anti-dilution)などの複雑な投資契約を、定款レベルで実装することが可能になります。投資家保護の観点からも、契約だけでなく定款で権利が保障されることは大きな安心材料となります。
労務出資制度の突破口
日本の会社法では、発起設立時において労務や信用による出資は認められていません。台湾の閉鎖会社では、発起人の出資として労務(Service)による出資が認められています。なお、2015年制定当初は信用(Credit)出資も認められていましたが、2018年の会社法改正(民国107年11月1日施行)により信用出資の規定は削除されました。資金は乏しいが高度な技術やノウハウを持つエンジニアや研究者が創業メンバーとなる場合に極めて有利な制度です。
ただし、労務出資が無制限に認められると、会社の資本的基礎が脆弱になる恐れがあります。経済部は解釈通達(経済部108年6月4日経商字第10802409490号)において、以下の通り一定の割合制限を設けています。この数値基準は、閉鎖会社を設立する際の実務上の最重要ポイントの一つです。
| 実収資本額(Paid-in Capital) | 労務出資の上限割合(発行済株式総数に対する比率) |
| 3,000万台湾ドル未満 | 50%(2分の1) |
| 3,000万台湾ドル以上 | 25%(4分の1) |
この規定により、初期資本金が3,000万台湾ドル未満の小規模なスタートアップであれば、株式の半分までを労務出資で賄うことが可能です。例えば、資金を提供する投資家と、技術を提供するエンジニアが50:50で株式を持ち合うJVを設立する場合、エンジニア側が現金を用意しなくても対等なパートナーシップを組むことができます。
労務出資を行う場合、定款にその種類、抵充金額、給付される株式数を記載し、全株主の同意を得る必要があります。一般的な現物出資のように、裁判所選任の検査役の調査や公認会計士による評価証明は、閉鎖会社においては原則として不要とされています。迅速な設立を支援するための特例措置ですが、裏を返せば、不当な評価による弊害を防ぐ責任は株主全員が負うことになります。全株主の同意という要件は非常に重く、一人でも反対すれば労務出資は認められません。
実務上の最大の落とし穴として、税務上の留意点があります。労務出資によって株式を取得した場合、台湾の所得税法上、その株式の時価相当額が個人のその他の所得として課税対象となる可能性があります。例えば、額面10元の株式を10万株、労務出資で取得した場合、100万台湾ドルの所得があったとみなされ、個人の総合所得税が課されるリスクがあります。現金は入ってこないのに税金だけが発生するキャッシュフローの問題が生じるため、日本から台湾現地法人へ人材を派遣し、労務出資として株式を取得させるスキームを検討する際は、台湾の税理士(会計士)と連携し、事前のタックスプランニングを行うことが不可欠です。
台湾の閉鎖会社における組織運営と意思決定プロセス
スタートアップには、形式的な手続きよりも実質的な議論と迅速な意思決定が求められます。閉鎖会社制度は、機関設計と会議運営の両面で大幅な規制緩和を行っています。日本の会社法が2005年の制定時に目指した方向性と軌を一にするものですが、台湾の閉鎖会社はさらに踏み込んだ簡素化を実現しています。
取締役会の簡素化と取締役選任
通常の株式会社(股份有限公司)では、取締役会(董事會)を設置し、少なくとも3名の取締役(董事)と1名の監査役(監察人)を選任する必要があります(ただし、2018年改正で一定の緩和あり)。閉鎖会社では、定款により取締役を1名または2名とすることができます。取締役が1名または2名の場合、取締役会は設置されず、取締役が会社の業務執行権限を直接行使します。合議体である取締役会を開催する必要がないため、招集通知の発送や議事録作成といった事務負担が大幅に軽減されます。創業初期の少人数チームに合致したリーンな組織運営が可能となります。
また、通常、台湾の会社法では取締役選任において少数株主の権利保護のために累積投票制(Cumulative Voting)が強制されます。1株につき選任する取締役の数と同数の議決権を与え、それを1人の候補者に集中投票できる制度です。閉鎖会社では定款によりこれを排除し、単純多数決など別の選任方法を採用することが認められています。経営陣(創業者グループ)による支配権維持を容易にし、意図しない人物が取締役に選任されるリスクを排除するための仕組みと言えます。日本企業が合弁会社を設立する際、自社が指名する取締役を確実に選任するためには、この累積投票制の排除を定款に盛り込むことが重要です。
株主総会のIT化と書面決議
閉鎖会社では、定款に規定することで、株主総会をビデオ会議等の視覚的な通信手段によって開催することが認められています。2018年の会社法改正により、一般の会社でも一定条件下でバーチャル株主総会が可能となりましたが、閉鎖会社はその先駆けとして導入された経緯があります。物理的な場所に拘束されないため、日本にいる親会社の担当者や投資家も、出張することなく容易に参加可能です。
最も特筆すべき点は、書面決議の許容です。会社法第356條の8第3項に基づき、定款に規定があれば、全株主の書面による同意をもって、株主総会の招集・開催手続きを省略し、決議があったものとみなすことができます。日本法における書面決議(みなし決議)と同様の効果を持ちますが、台湾の一般株式会社では原則として実際の会議開催が求められるのに対し、閉鎖会社ではより広範にこの簡便な手続きを利用できます。全株主が同意している案件についてわざわざ会議を開く無駄を省くことができます。なお、台湾の閉鎖会社における書面決議は、日本と異なり定款への事前授権だけでは足りず、当該議案ごとに全株主の書面同意を都度取得する必要があります。
私募社債および転換社債の発行
資金調達手段として、社債の発行も柔軟化されています。閉鎖会社は、公募を行わず、私募の形式であれば、転換社債や新株予約権付社債を発行することができます。通常の非公開会社では、転換社債の発行には純資産額などの財務要件による制限がありましたが、閉鎖会社ではこれが解禁されています。投資家に対してデット(負債)から入り、成長後にエクイティ(株式)へ転換するという投資スキームを提供しやすくなっています。
米国のSAFE(Simple Agreement for Future Equity)や日本のJ-KISS(Japan Keep It Simple Security)のような、バリュエーションを先送りにして迅速に資金調達を行う手法を、台湾法下で再現するための重要な法的基盤となります。投資家にとっては、ダウンサイドリスクを債権者としてヘッジしつつ、アップサイドを株主として享受できる魅力的な選択肢となります。
台湾の閉鎖会社における株式譲渡制限と出口戦略

閉鎖会社(Close Company)の本質は、その名の通り閉鎖性にあります。誰が株主であるかが極めて重要視されるため、株式の譲渡制限に関するルールとその法的な有効性は、実務上最も注意を要する論点の一つです。
定款による譲渡制限の設計
会社法第356條の1第1項第2号は、閉鎖会社に対し株式譲渡の制限を定款に定めることを義務付けています。日本法では当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を要するという承認制が一般的ですが、台湾の閉鎖会社では、より多様かつ具体的な制限方法が認められています。
具体的には、全株主または特定株主の同意を要件とすることや、株主が株式を譲渡しようとする際にまず会社や他の株主に対して優先的に買い取る機会を与える先買権を定めることができます。また、支配株主が株式を売却する際に少数株主も同一条件で売却に参加できる共同売却権や、逆に少数株主に対して同一条件での売却を強制できる強制売却権も定款に記載可能です。
従来は株主間契約で定めるのが一般的でしたが、閉鎖会社では定款に記載することで、対世的な効力を持たせることが可能です。契約違反による損害賠償請求にとどまらず、定款違反の譲渡そのものを無効と主張できる点で、法的安定性が飛躍的に向上します。
判例に見る定款自治の範囲
株式譲渡制限の有効性に関しては、近年の台湾の裁判例において、閉鎖会社の定款自治を尊重する傾向が見られます。重要な判例として、台湾最高法院112年度台上字第1512号民事判決が挙げられます。この裁判では、閉鎖性股份有限公司の定款において株主が死亡した場合、相続等によって株式が分散することを防ぐため、全特別株主の同意を経て、指定された株主が時価でその株式を買い取ることができるという旨の規定について、その有効性が争われました。裁判所は、閉鎖会社の特性上、株主間の信頼関係や閉鎖性を維持する必要性は高く、公序良俗に反しない限り、定款による私的自治は尊重されるべきであるとの判断を示しました。
日本の会社法第174条(相続人等に対する売渡しの請求)と類似の効果を持つものですが、台湾では法律の明文規定だけでなく、定款の解釈を通じてこうしたスキームが認められている点が実務上重要です。日本企業が台湾パートナーと合弁を組む際、相手方の創業者が死亡した場合に、その相続人が経営に関与してくるリスクを排除し、株式を買い取る権利を確保することができます。
IPOおよび一般会社への移行
閉鎖会社はスタートアップの成長期に適した形態ですが、大規模な資金調達や上場(IPO)を目指す段階になると、株主数50人の制限や閉鎖性が足かせとなる場合があります。この場合、会社は株主総会の特別決議等を経て、一般の株式会社(公開会社または非公開会社)へ組織変更を行うことができます。
会社法第356條の13は、閉鎖会社がその要件(株主数制限など)を満たさなくなった場合、一般会社へ変更登記を行わなければならないと規定しています。実務的には、シリーズB、シリーズCといったレイターステージの資金調達段階で、VCなどの要請により閉鎖会社から一般会社へ転換するケースが見られます。この発展的解消のパスが法律上明確に用意されていることも、閉鎖会社を利用する安心材料の一つです。
日本企業が台湾へ進出・投資する際の実務的留意点
日本企業が台湾現地法人を設立する場合、あるいは台湾のスタートアップに投資する場合、閉鎖会社を選択肢に入れるべきか否か。ここでは実務的な視点から判断基準を提示します。
会社形態の選択基準
台湾には主に以下の会社形態がありますが、それぞれの特性を理解し、事業目的に合致した選択を行う必要があります。
| 特徴 | 有限公司(Limited Company) | 股份有限公司(Company Ltd. by Shares) | 閉鎖性股份有限公司(Close Company) |
| 法的性質 | 持分会社に近い(株券なし) | 一般的な株式会社 | 株式会社の特別形態 |
| 株主数 | 1人以上(上限なしだが実質少数) | 2人以上(法人なら1人以上) | 50人以下 |
| 出資 | 現金、現物 | 原則現金、現物 | 現金、現物、労務、信用 |
| 株式譲渡 | 他社員の過半数の同意が必要 | 原則自由(定款制限不可) | 定款で制限必須 |
| 機関 | 取締役のみ(監査役不要) | 取締役3名+監査役1名以上(例外あり) | 取締役1名以上(監査役不要) |
| 適性 | 規模拡大予定のない中小企業、子会社 | 将来的な上場を目指す企業 | スタートアップ、JV、同族企業 |
日本企業の完全子会社(100%出資)として設立する場合は、従来の有限公司や通常の股份有限公司で十分な場合が多いです。特に、親会社1社のみが株主であれば、閉鎖会社特有の株主間の調整機能(複数議決権や譲渡制限)のメリットは薄れます。ただし、取締役を1名にしたいというニーズや、将来的に現地社員にストックオプション的なインセンティブを与えたいという計画がある場合は、閉鎖会社を選択する合理性があります。
一方で、台湾パートナーとの合弁(JV)の場合は、閉鎖会社が最も威力を発揮する場面です。日本側と台湾側の出資比率、支配権、技術提供(労務出資)、Exit条件などを細かく設計し、定款に落とし込むことができるため、非常に適しています。特に、日本側が資金を出し、台湾側が技術や販路(労務・信用)を出すようなケースでは、閉鎖会社以外の選択肢は考えにくいと言えます。
登記・ビザ・税務の連携
閉鎖会社の設立登記は、経済部(商業司または各自治体の登記所)に行います。定款に閉鎖会社特有の記載(株式譲渡制限、無額面株式など)が必要であり、一般的な雛形ではなく、弁護士によるカスタマイズされた定款作成が不可欠です。また、日本企業が出資する場合、経済部投資審議司(Department of Investment Review)からの事前承認が必要です(外国人投資条例)。これは閉鎖会社であっても免除されません。特に中国本土資本(陸資)が含まれるか否かの審査は厳格に行われます。
台湾現地に日本人代表者を派遣する場合、就労ビザおよび外僑居留証(ARC)の取得が必要です。台湾政府は就業ゴールドカード(Employment Gold Card)制度などを通じて高度人材の受け入れを促進しており、スタートアップ企業の創業者や経営陣に対する優遇措置も存在します。
まとめ
台湾の閉鎖性股份有限公司制度は、シリコンバレー流の柔軟な資本政策と、アジア特有の人的信頼関係を重視した閉鎖性を融合させた、ハイブリッドで先進的な法制度です。無額面株式や低額発行による柔軟なバリュエーション、複数議決権や拒否権付株式による創業者の支配権維持、労務出資による技術人材の取り込み、書面決議やビデオ会議による機動的な意思決定、定款による強力な株式譲渡制限による望ましくない分散の防止といった特徴があります。台湾のスタートアップへの投資を考える日本のベンチャーキャピタルや事業会社、あるいは台湾のパートナーと技術提携・合弁事業を行う日本企業にとって、極めて強力なツールとなります。一方で、定款の設計ミスや現地の最新法令(解釈通達)の看過は、将来的な紛争の火種となりかねません。特に労務出資における税務リスクや、株主間契約と定款の整合性は、高度な専門知識を要する分野です。
モノリス法律事務所は、IT・インターネット・ビジネスに特化した法律事務所として、日本のスタートアップ法務やM&Aにおいて豊富な実績を有しています。台湾における法務サポートにおいては、現地の提携事務所である椽智商務科技法律事務所と緊密に連携し、ワンストップサービスを提供しています。日本企業のニーズに合わせた閉鎖会社定款の設計・作成から、投資契約のレビュー、当局対応、進出後の実務支援に至るまで、言葉の壁だけでなく、法制度や商習慣の文脈の違いを深く理解する両事務所の専門家チームが、貴社の台湾ビジネスの成功を法的側面から強力にバックアップいたします。台湾進出をご検討の際は、ぜひモノリス法律事務所にご相談ください。
河瀬 季
Toki Kawase
IT企業経営の経験を持つエンジニア出身の弁護士。東大院修了後、モノリス法律事務所を開設。上場企業からスタートアップまで顧問弁護士やCLOとして経営を支援する。特に台湾法務に精通し、専門チームを率いて現地法人設立から労務、知財戦略分野で日本企業の台湾進出を多角的にサポートしている。
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