台湾の広告規制:誇大広告に対する公平交易委員会の摘発基準

台湾の広告規制:誇大広告に対する公平交易委員会の摘発基準

近年、日本企業にとって台湾市場は、地理的な近接性や文化的な親和性、成熟したEC市場の存在により、海外進出の足掛かりとして極めて重要です。多くの経営者や法務担当者が、越境ECや現地法人の設立を通じて台湾の消費者へ直接アプローチする機会を模索していますが、看過できない最大のリスク要因の一つが、マーケティング活動における法的規制の差異です。日本国内でも2023年10月から景品表示法の指定告示によるステルスマーケティング規制が施行されましたが、台湾では以前から、より厳格かつ包括的な法的枠組みの中で、広告表現に対する監視が行われてきました。

台湾における広告規制の中核をなす法律は公平交易法であり、所管官庁である公平交易委員会(Fair Trade Commission)は、市場の公正な競争秩序を維持するために強力な権限を行使しています。日本の景品表示法が消費者保護を主眼とする行政規制であるのに対し、台湾の公平交易法は独占禁止法と不正競争防止法の性質を併せ持ち、違反事業者に対しては行政処分のみならず、競合他社や消費者からの懲罰的損害賠償請求、場合によっては刑事罰さえも課される可能性があります。特にインフルエンサーやアフィリエイターを起用したプロモーションにおいては、日本とは異なり、インフルエンサー個人が共犯として法的責任を問われるリスクが存在します。

本記事では、台湾の広告規制、とりわけ公平交易法に基づく誇大広告やステルスマーケティングへの摘発基準について、最新の法令、ガイドライン、判例に基づき解説します。日本の法制度との構造的な相違点に焦点を当て、現地でのマーケティング活動において企業が陥りやすい法的な落とし穴と、それを回避するための実務的なコンプライアンス戦略を提示します。

台湾広告規制の法的構造と公平交易法

台湾における広告活動を規律する法体系は多岐にわたりますが、最も包括的な適用範囲を持つのが公平交易法です。この法律は日本の独占禁止法と景品表示法の両方の機能を包摂しており、市場における自由かつ公正な競争を促進し、消費者の利益を確保することを目的としています。日本企業が台湾でプロモーションを行う際、最初に理解しなければならないのは、この法律が定める不実広告(虚偽広告)および引人錯誤(誤認惹起)の概念です。

公平交易法第21条の射程と規制対象

公平交易法第21条は、事業者が商品や広告において、虚偽不実または誤認を招く表示を行うことを禁止する、広告規制の基本条項です。同条第1項では、事業者が商品またはその広告上において、あるいはその他公衆が知り得る方法によって、商品に関連する価格、数量、品質、内容、製造方法、製造日時、有効期限、使用方法、用途、原産地、製造者、製造地、加工者、加工地等について、虚偽不実または誤認を招く表示・表徴をしてはならないと規定しています。

ここで列挙されている項目はあくまで例示に過ぎません。公平交易委員会(以下「公平会」)の解釈によれば、規制の対象となるのは、経済的価値を有するあらゆる取引対象、および顧客を誘引する効果を持つその他の関連取引事項を含みます。具体的には、事業者が取引に付随して提供する贈品や懸賞、機会によって得られる商品やサービスの当選確率、他事業者の商品との比較項目なども、すべて規制の対象です。日本の景品表示法における優良誤認や有利誤認の概念と類似していますが、台湾の規制はより広範であり、かつ取引決定に影響を与える事項という要件の解釈が極めて柔軟に行われます。

公平会は、表示が虚偽不実(False)であるか、あるいは引人錯誤(Misleading)であるかを判断する際、一般消費者の認知基準を重視します。虚偽不実とは、表示または表徴が事実と合致しておらず、その差異が一般消費者に受容されない程度のものを指します。一方、引人錯誤とは、表示内容が客観的事実と完全に矛盾していなくとも、その表現方法や文脈によって、一般消費者に誤った認識や決定を抱かせるおそれがある場合を指します。つまり、あからさまな嘘でなくとも、消費者をミスリードするような表現は違法となります。

公平交易法違反に対する制裁の厳格性

日本企業が最も留意すべきは、違反した場合のペナルティの重さです。日本の景品表示法違反に対する措置命令や課徴金納付命令も厳しいものですが、台湾の公平交易法違反に対する制裁は、企業の存続に関わるほどのインパクトを持つ場合があります。

行政罰、民事責任、刑事責任のそれぞれの観点から、その厳格性を以下の表にまとめました。

責任の性質具体的な内容とリスク
行政罰公平会は違反事業者に対し、行為の停止、是正措置命令に加え、5万NTD以上2,500万NTD以下の過料を科すことができます。さらに、改善期限内に是正されない場合は、10万NTD以上5,000万NTD以下の過料を、是正されるまで回次ごとに繰り返し科すことができます。
民事責任公平交易法は懲罰的損害賠償の制度を採用しています。事業者の違反行為によって損害を受けた者は損害賠償を請求でき、その侵害行為が事業者の故意によるものである場合、裁判所は損害額の3倍以下の範囲で賠償額を定めることができます。
刑事責任行政処分を受けた後も違反を継続した場合、第25条(欺罔的行為)の適用を通じて刑事責任が生じる余地があります。例えば競争制限的行為(独占・カルテル)の継続違反には3年以下の有期懲役または1億NTD以下の罰金が規定されています。

このように、台湾の広告規制は、行政、民事、刑事の三方向から企業を包囲する厳格な枠組みを持っています。

台湾におけるインフルエンサーマーケティングと法的責任

台湾におけるインフルエンサーマーケティングと法的責任

現代のマーケティングにおいて、ソーシャルメディアを通じたインフルエンサー(台湾では網紅や部落客と呼ばれます)の活用は不可欠なものとなっています。しかし、この領域こそが日本と台湾の法規制の差異が最も顕著に表れる部分であり、日本企業が法的トラブルに巻き込まれやすい危険地帯でもあります。

薦證廣告(推薦証言広告)の定義と規制

公平会は、エンドースメント広告(著名人による推薦広告)やインフルエンサーマーケティングを規律するために、「公平交易委員會對於薦證廣告之規範說明(推薦証言広告に関する公平交易委員会の規範説明)」を策定しています。このガイドラインにおいて薦證廣告(推薦証言広告)とは、広告主以外の者(推薦者)が、商品やサービスに対する自身の意見、信頼、発見、または親体験の結果を、公衆に対して表現する広告を指します。

この定義における推薦者には、テレビCMに出演する著名な芸能人やタレントだけでなく、専門家、機関、そしてインターネット上で活動するインフルエンサーや一般消費者も含まれます。企業から依頼を受けて商品を紹介するYouTuberやインスタグラマーの投稿は、原則としてすべてこの推薦証言広告に該当し、公平交易法の規制対象となります。

広告主とインフルエンサーの連帯責任

日本のステマ規制(景品表示法)では、処分の対象はあくまで広告主(事業者)であり、依頼を受けたインフルエンサー個人が法的な処分を受けることは原則としてありません。インフルエンサーはあくまで広告の媒体として扱われ、その行為に対する責任は広告主に帰属するという考え方が一般的です。しかし、台湾の法制度はこの点において根本的に異なります。公平交易法第21条第4項は、広告主だけでなく、広告に関与した他の主体の責任についても明記しています。具体的には、第4項で広告代理業や広告メディア業、そして第5項で広告の推薦者(薦證者)自身の責任を定めています。

同条第5項前段の規定によれば、推薦者が、その広告が虚偽不実または誤認を招くものであることを明知(知っていた)または可得而知(知り得た)にもかかわらず推薦を行った場合、広告主と連帯して損害賠償責任を負うことになります。ただし、同項後段(但書)により、推薦者が専門家や著名人ではない一般消費者(知名公眾人物・専業人士または機構に該当しない者)である場合に限り、その連帯賠償責任の上限を「広告主から受領した報酬の範囲内」とする制限規定が設けられています。なお、同条第6項は、この「推薦者(廣告薦證者)」の定義として、広告主以外であって、広告においてまたはその他公衆が知る方法により、自らの見解、信頼、個人の経験または専門的な地位を反映させ、商品またはサービスについて推奨を行う者と規定しています。

さらに注意すべきは、行政罰に関する同項後段の規定です。推薦者が広告主と故意に共同して不実広告を実施したと認められた場合、推薦者自身も広告主と同様に、公平交易法違反の主体として処罰の対象となります。これは、インフルエンサーが単に依頼された内容を投稿しただけでなく、企業と結託して積極的に消費者を欺くような行為に関与した場合、最大で25,000,000NTDの過料がインフルエンサー個人に科される可能性があるということです。このインフルエンサー自身の処罰可能性は、台湾でのマーケティング戦略を立案する上で、日本企業が最も警戒すべき法的リスクの一つです。

さらに注意すべきは、行政罰(罰金)に関する運用です。推薦者が広告主と故意に共同して不実広告を実施したと認められた場合、行政罰の共通ルールである行政罰法第14条第1項等に基づき、推薦者自身も広告主と同様に、公平交易法違反の主体として直接処罰の対象となります。これは、インフルエンサーが単に依頼された内容を投稿しただけでなく、企業と結託して積極的に消費者を欺くような行為に関与した場合、最大で25,000,000NTDの罰金がインフルエンサー個人に科される可能性があるということです。このインフルエンサー自身の処罰可能性は、台湾でのマーケティング戦略を立案する上で、日本企業が最も警戒すべき法的リスクの一つです。

利益関係の開示義務とステルスマーケティング

台湾におけるステルスマーケティング対策は、利益関係の開示という形で行われています。ガイドラインでは、広告主と推薦者との間に一般大衆が合理的に予期しない利益関係が存在する場合、その事実を広告内で明確に開示しなければならないと定めています。ここで言う利益関係とは、金銭的な報酬の授受に限られず、商品の無償提供(ギフティング)、サービス体験の提供、雇用関係、その他の有形無形の利益供与が含まれます。

消費者は通常、第三者による推奨が中立的な意見であると期待するため、そこに隠された利益関係があるならば、それは消費者の判断に影響を与える重要な情報であり、隠蔽することは引人錯誤(誤認惹起)に該当します。開示の方法についても厳格な運用が求められます。単に動画の概要欄の奥深くに記載したり、大量のハッシュタグの中に紛れ込ませたりするような方法は不十分とみなされるリスクが高いでしょう。広告、スポンサー、〇〇社とのタイアップ、〇〇社からの提供など、消費者が一見して広告であると認識できる明確な表示が必要です。

台湾インターネット広告処理原則の改正と最新動向

デジタル経済の急速な発展に伴い、公平会は規制の現代化を進めています。特に2023年(民国112年)2月に改正された「公平交易委員會對於網路廣告案件之處理原則(インターネット広告案件に関する公平交易委員会の処理原則)」は、近年のネット広告手法の変化に対応した重要な改正を含んでおり、日本企業にとっても無視できない内容となっています。

網紅(インフルエンサー)等の広告主認定

この改正における最大のポイントは、インフルエンサーやビデオブロガー、ライブストリーマー(直播主)等のソーシャルメディアユーザーが、場合によっては広告主そのものとして認定される基準が明確化されたことです。同処理原則によれば、インフルエンサーが自身のSNSページやブログ等を通じて商品を自らの名義で販売する場合(自己販売型)や、メーカーとショッピングサイト運営者が共同で広告を作成・運営する場合においてインフルエンサーがサイト運営者として自身の名義で対外的に広告を掲載し販売に従事する場合(共同運営型)には、インフルエンサー自身が広告主とみなされます。

インフルエンサーが広告主と認定された場合、その責任は推薦者としての連帯責任にとどまりません。商品に関する表示内容の真実性を担保する一次的な義務者となり、不実広告に対する行政処分の直接的な対象となります。これは、いわゆる団購(共同購入)などのスキームを用いて、インフルエンサーが実質的な販売主体となっているケースを念頭に置いた規制強化と言えます。

インターネット広告特有の違反類型

改正された処理原則では、インターネット広告に特有の違反類型が具体的に列挙されており、実務上のガイドラインとして機能しています。

違反類型具体的内容とリスク
虚偽の価格・数量表示実際には在庫が豊富にあるにもかかわらず残りわずか、ラスト1点と表示したり、期間限定ではないのに今だけ半額と表示する行為。これらは消費者の心理的な焦燥感を煽るダークパターンの一種として厳しく監視されています。
不実の贈品・懸賞全員プレゼントと謳いながら実際には厳しい条件が付されていたり、当選確率を偽ったりする行為。YouTube等のライブ配信で行われる抽選会においても、参加条件や当選後の受取条件を明確に表示しない場合は違反となります。
過度な画像加工ビフォーアフター写真において、照明、角度、修整ソフト(Photoshop等)を用いて、商品使用による効果とは無関係な変化を強調する行為。美容・健康関連商品で頻発しており、公平会が特に注視している領域です。
不当な比較広告競合他社の商品と比較する際、客観的な根拠や公平な基準に基づかず、自社商品を優位に見せる行為。科学的データの裏付けのない比較は、直ちに違法と判断される可能性が高いです。
誤認を招くハイパーリンク検索連動型広告などで、他社のブランド名や公式サイトと思わせるような文言を用いて自社サイトへ誘導する行為。消費者の誤認を利用した顧客誘引として規制対象となります。

これらの類型は、日本のECサイトでも散見される手法ですが、台湾ではこれらが公平交易法第21条違反として、巨額の罰金の対象となることを強く認識する必要があります。

台湾公平会の摘発事例と判例分析

台湾公平会の摘発事例と判例分析

台湾における広告規制の実態を正しく把握するためには、行政機関である「公平交易委員会(公平会)」による行政処分と、司法機関(裁判所)による民事判決の両面からアプローチする必要があります。台湾の法執行はいずれも非常に厳格であり、日本企業が陥りがちな「日本国内の常識」が通用しないリスクを浮き彫りにする2つの重要事例を分析します。

サムスン書き込み部隊(写手門)事件(行政処分:公平会)

台湾におけるステルスマーケティング規制の転換点となり、企業のマーケティング倫理に大きな警鐘を鳴らしたのが、2013年に発覚したサムスン書き込み部隊(写手門)事件です。

韓国サムスン電子の台湾現地法人(台湾三星電子)が、現地の広告代理店およびその下請け企業を通じて、組織的なステルスマーケティングを展開していました。具体的には、一般消費者を装ったスタッフやアルバイトを大量に雇用し、主要なガジェット系インターネット掲示板において、自社製品を絶賛する書き込みを行う一方で、競合他社(主に台湾HTC社)の製品に対するネガティブな批判や欠点の指摘を組織的に繰り返していました。

公平会は、この一連の行為が単なる誇大広告の枠を超え、市場における欺罔(ぎもう)的かつ公正な競争を阻害する行為であると認定しました。この事案では、不実広告を禁じる第21条ではなく、より包括的な包括条項である公平交易法第25条(当時は第24条:「欺罔または顕著に公正を欠く行為の禁止」)が適用されました。これは台湾で初めて同条がインターネット上の口コミ操作に適用された歴史的事例です。

結果、各社に対して以下の重い行政処分が下されました。

処分対象罰金額
台湾三星電子(広告主)10,000,000NTD
鵬泰顧問有限公司(広告代理店)3,000,000NTD
商多利国際有限公司(下請け業者)50,000NTD

日本でも2023年からステマ規制(景品表示法違反)が開始されましたが、日本の場合は原則として「広告主」のみが措置命令等の対象となります。しかし台湾の公平交易法は、広告主だけでなく、実行部隊となった広告代理店や下請け業者に対しても直接罰金を科す点が大きく異なります。台湾で現地の代理店にマーケティングを丸投げする際、現地ベンダーが違法なサクラ行為やライバル社へのネガティブキャンペーンを行えば、広告主である日本企業も巨額の罰金とブランド失墜の直撃を受けることになります。

インフルエンサー向け発表会と企業の広告責任(民事判決:士林地方法院 111年度消字第10号等)

行政による罰金だけでなく、消費者から直接提起される民事訴訟において、台湾独自の強力なペナルティが下された最重要判例が、通称「紫布(ズーブー)事件」(士林地方法院 111年度消字第10号民事判決)です。

本案は、人気インフルエンサー・ストリーマーである「丁特(ディンター)」氏が、大手ゲーム運営会社「遊戲橘子(ガマニア)」を相手取り、スマホゲーム内のガチャ(アイテム製作)確率に関する虚偽広告を理由に損害賠償を求めた事案です。運営会社はユーザー発表会やインフルエンサーを招いた配信、ゲーム内告知において「台湾版の確率は韓国本家と完全に同一(10%)」と一貫して宣伝していましたが、実際にはその半分(5%)に設定されていたことが原告(インフルエンサー自身)の検証配信によって発覚しました。

裁判所は、インフルエンサーを起用した発表会での説明や、それに類するゲーム内告知もすべて消費者保護法上の「広告」に該当すると認定。さらに、インフルエンサーの発信が消費者の購買決定に決定的な影響力を持つからこそ、企業はインフルエンサーに伝達させる情報の真実性を厳格に確保せねばならない(消費者保護法第22条)と判示しました。

結果、裁判所は不実広告を認め、実際の課金損害額(約261万NTD)の3倍にあたる合計784万875 NTD(約3,500万円)の損害賠償を企業に命じました。

本判決は、日本企業が最も警戒すべき台湾独自の制度である「消費者保護法(消保法)第51条:懲罰性損害賠償」の威力を証明しました。

  • 日本法との違い: 本の民法や景品表示法には「懲罰性損害賠償(企業への罰としての賠償上乗せ)」の制度はありません。日本で同様の不実広告トラブルが起きても、基本的には返金や実損害の補填にとどまります。
  • 台湾法の厳格さ:台湾では、企業の「故意」による消費者被害に対して、実損害の最大5倍までのペナルティ(賠償金)を上乗せして消費者に支払うよう裁判所が命じることができます。本案では、企業側が虚偽を認めず、逆にインフルエンサーを名誉毀損で提訴するなどの態度に出たことが「極めて悪質」とみなされ、3倍の懲罰賠償が科されました。

本判例が示したのは「インフルエンサーに嘘の条件を語らせてプロモーションを行った企業側には、消保法による壊滅的な民事賠償リスクが突きつけられる」という事実です。台湾進出企業は、KOL(Key Opinion Leader)に提供する製品データや広告表現の民事上のリーガルチェックに、日本以上の慎重さを持たねばなりません。

日本と台湾の広告規制の比較

日本と台湾の広告規制には、構造的な違いが存在します。この差異を理解することが、適切なコンプライアンス戦略の第一歩となります。以下の比較表をご覧ください。

比較項目日本(景品表示法・ステマ規制)台湾(公平交易法・不実広告規制)
規制の法的性質消費者庁による行政規制(消費者保護法理)独立行政委員会による競争法規制(独禁法+消費者保護法理)
処分の対象原則として広告主(事業者)のみ。インフルエンサー個人は処分の対象外。広告主に加え、広告代理店、メディア、インフルエンサー(推薦者)も対象。
行政罰(金銭)課徴金納付命令(売上額の3%等)。不当利得の剥奪的性格が強い。過料(罰金)。50,000〜25,000,000NTD。違反の回数や悪質性に応じて繰り返し賦課可能。
民事責任消費者契約法等による取消権はあるが、懲罰的賠償制度はない。懲罰的損害賠償が可能。故意がある場合は損害額の3倍まで請求可能。
刑事責任措置命令違反など、間接的な場合に限られる。悪質な継続違反には懲役刑や刑事罰金の規定あり。
ステマの扱い2023年の指定告示により、不当表示の一類型として規制開始。以前より不実広告または欺罔行為として規制。利益関係の非開示は違法。
比較広告一定の要件を満たせば適法とされるが、実務上は抑制的。公正かつ客観的なデータに基づく限り許容されるが、虚偽・誹謗中傷には厳しい制裁。

この表から明らかなように、台湾の規制は対象者の広さとペナルティの重さの両面において、日本よりも厳しい環境にあります。特に懲罰的損害賠償のリスクは、企業の財務に直接的な打撃を与える可能性があるため、最大限の警戒が必要です。

日本企業への提言:台湾進出時のコンプライアンス戦略

以上の法的背景を踏まえ、日本企業が台湾市場に進出する際に講じるべき具体的なコンプライアンス戦略を提言します。まず、契約書によるリスクコントロールが不可欠です。台湾のインフルエンサーや広告代理店と契約を締結する際、日本の契約書のひな形を単に翻訳して使用することは危険です。インフルエンサーに対し、発信する情報(体験談や感想)が真実であり捏造や虚偽がないことを保証させる真実性の表明保証条項、公平会のガイドラインに準拠し広告であることを明確に表示することを義務付ける利益関係の開示義務条項、万が一の当局処分時に企業側の損害を求償できるコンプライアンス遵守と求償条項を明確に盛り込む必要があります。

次に、クリエイティブ審査の厳格化とローカライゼーションが求められます。日本では許容される表現が、台湾では直ちに違法となるケースがあります。例えば、「売上No.1」、「台湾初」等の最上級表現を使用する場合、台湾の公平会は客観的かつ検証可能な第三者機関の調査データを求めます。自社調べや根拠不明瞭なデータに基づく表示は摘発対象となります。また、化粧品や健康食品の広告において医薬品的な効能効果を暗示することは、公平交易法だけでなく関連衛生法規にも違反します。現地の法感覚に合わせた審査基準の策定が必要です。

最後に、モニタリング体制の構築も重要です。インフルエンサーマーケティングにおいては、投稿後の事後監視が欠かせません。インフルエンサーがPV稼ぎやエンゲージメント向上のために、企業が承認していない過激な表現を追加したり、コメント欄で不適切な回答を行ったりするケースは後を絶ちません。投稿内容の定期的なパトロールを行い、不適切な表現が発見された場合には即時に修正・削除させるフローを確立し、これらを現地の言語と法感覚で判断できる体制を整備することが推奨されます。

まとめ

台湾における広告規制、特に公平交易法第21条に基づく不実広告への対応は、日本企業が台湾市場で成功を収めるための前提条件です。日本の法制度と比較して、インフルエンサー個人までもが処罰対象となる点、懲罰的損害賠償を含む強力な制裁措置が存在する点は、経営リスクとして重く受け止める必要があります。サムスン書き込み部隊事件のような過去の摘発事例は、市場の公正さを歪める行為に対して台湾当局がいかに厳しい姿勢で臨むかを如実に示しています。日本での成功体験やコンプライアンス基準をそのまま持ち込むのではなく、台湾の法基準に適合した現地化された管理体制を構築することが、ブランドの信頼を守り、台湾市場での持続的な成長を実現する唯一の道です。

本記事で解説した通り、台湾進出には高度な法的知見と現地の商慣習への理解が不可欠です。モノリス法律事務所は、IT・インターネット・ビジネス法務に特化し、日本国内におけるステマ規制対応や風評被害対策、クロスボーダー法務において豊富な実績を有しています。一方、台湾の椽智商務科技法律事務所は、台湾の公平交易法、知的財産権、そして急速に進化するテクノロジー法務に精通したエキスパート集団です。両事務所は強固な連携体制を構築しており、日台間の言語や法制度の壁を超えて、広告クリエイティブのリーガルチェック、インフルエンサー契約書の作成・レビュー、万が一の当局対応や紛争解決に至るまで、ワンストップでシームレスなリーガルサービスを提供することが可能です。貴社の台湾ビジネスを法的リスクから守り、安全かつ迅速に加速させるためのパートナーとして、ぜひ我々の専門知識をご活用ください。

監修

河瀬 季

Toki Kawase

IT企業経営の経験を持つエンジニア出身の弁護士。東大院修了後、モノリス法律事務所を開設。上場企業からスタートアップまで顧問弁護士やCLOとして経営を支援する。特に台湾法務に精通し、専門チームを率いて現地法人設立から労務、知財戦略分野で日本企業の台湾進出を多角的にサポートしている。

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