台湾企業のコーポレートガバナンス:株主総会の運営実務
日本と台湾は、地理的な近接性のみならず、歴史的・経済的にも密接な関係にあります。多くの日本企業が製造拠点、R&Dセンター、販売拠点として台湾に進出しており、その形態は単独出資の子会社設立から現地有力企業との合弁事業まで多岐にわたります。
台湾の会社法は、その法体系の基礎を日本の旧商法やドイツ法に置いており、条文構造や用語において日本法と多くの共通点を有しています。しかし近年の累次改正、とりわけ英米法的なコーポレートガバナンスの概念(独立取締役、監査委員会など)の導入やデジタル化への迅速な対応を経て、台湾の会社法制は独自の進化を遂げています。株式会社の最高意思決定機関である株主総会の運営実務に関しては、招集手続の厳格さ、バーチャル開催の要件、決議の瑕疵に関する司法判断など、日本法とは異なる落とし穴が数多く存在します。
本記事は、台湾会社法における株主総会の運営実務を最新の法改正および重要判例を踏まえて網羅的に解説するものです。実務上の留意点を日本法との比較視点から浮き彫りにし、現地法人の適正なガバナンス体制構築に資することを目的としています。
目次
台湾会社法制の基本構造:公開発行会社と非公開会社の区分
台湾における会社法実務を理解する上で最も基本的かつ重要な視点は、公開発行会社と非公開会社の区分です。日本の会社法における公開会社(譲渡制限のない株式を発行する会社)と非公開会社(全ての株式に譲渡制限がある会社)の区分とは異なり、台湾では金融監督管理委員会(FSC)による公開発行の承認(IPOや店頭登録を含む)を受けているか否かが基準となります。日本企業の台湾現地法人の多くは、株式を証券市場に上場していない非公開会社として運営されています。しかし現地パートナーが上場企業である場合や、将来的なIPOを目指す場合、より厳格な規制が適用される公開発行会社のルールを理解しておく必要があります。
本稿では、多くの日系企業が該当する非公開会社のルールを主軸に据えつつ、必要に応じて公開発行会社特有の規制についても言及し、比較分析を行います。この区分の理解を誤ると、招集通知の期限計算や委任状勧誘の可否といった実務手続において致命的なミスにつながる可能性があるため、常に自社(または投資先)のステータスを意識することが肝要です。
台湾における株主総会の権限と位置づけ

取締役会との権限分配
台湾の株式会社(股份有限公司)において、株主総会は会社の基本的事項を決定する最高機関ですが、その権限は会社法および定款によって定められた事項に限定されます。日常的な業務執行の決定権限は取締役会に委ねられており、この構造は日本の取締役会設置会社と同様です。
日本法と比較して特徴的なのは、特定の重要事項に関する株主総会の専決権限が明確かつ厳格に規定されている点です。取締役や監察人の選任・解任はもちろんのこと、定款変更、解散、合併、そして全事業または主要な資産の譲渡などは、必ず株主総会の特別決議を経る必要があります。日本では重要な財産の処分は原則として取締役会決議事項であり、事業譲渡等の場合にのみ株主総会決議が必要となります。台湾では主要な資産の譲渡の解釈を巡って争いが生じやすく、株主総会の関与が必要となる場面が日本よりも広範になる傾向があります。
台湾における株主総会の種類と開催時期
台湾の株主総会には、日本と同様に定時株主総会と臨時株主総会の二種類が存在します。定時株主総会は、毎事業年度終了後6ヶ月以内に、少なくとも年1回開催しなければなりません。多くの台湾企業は12月決算であるため、翌年の6月末までに開催することが求められます。
この期間内に開催されない場合、所管官庁からの過料の制裁を受けるリスクがあるほか、決算承認や配当決議が遅れることで、親会社である日本企業の連結決算や資金計画に影響を及ぼす可能性があります。一方、臨時株主総会は必要がある場合に随時招集されます。取締役会が必要と認めた場合のほか、一定の要件を満たす少数株主や監察人による招集も認められています。
台湾における株主総会の招集手続:日本企業が陥りやすい罠
株主総会の適法な開催は、コーポレートガバナンスの根幹をなす手続です。招集手続に瑕疵があった場合、決議取消の訴えの対象となり、経営の法的安定性が著しく損なわれることになります。ここでは、実務上特にミスが発生しやすい招集手続の詳細について解説します。
取締役会による招集決定と取締役への通知
株主総会の招集は、原則として取締役会の決議に基づいて行われます。まず取締役会自体を適法に開催する必要がありますが、ここで注意すべきは取締役会招集通知の期間です。
台湾会社法は、取締役会の招集通知を会日の7日前までに各取締役および監察人に発しなければならないと定めています。ただし緊急の事由がある場合は、いつでも招集することが可能です。また定款に別段の定めがある場合や、取締役全員の同意がある場合は、この期間を短縮したり、通知手続を省略したりすることができます。
日本企業の実務担当者が注意すべき点は、この7日前という期間計算と、通知漏れがもたらす深刻な法的帰結です。日本の会社法では、取締役会招集通知は原則として会日の1週間前(定款で短縮可)ですが、台湾の実務においては、この通知期間不足や一部役員への通知漏れが、後の株主総会決議の効力を争う訴訟の主要な争点となっています。
重要判例研究:最高法院110年度台上字第1605号民事判決
取締役会の招集手続に瑕疵があった場合、その取締役会で決議された株主総会の招集および、その結果開催された株主総会の決議の効力が問題となります。この点について、台湾の最高裁判所にあたる最高法院が2021年(民国110年)に下した判決(110年度台上字第1605号)は、実務に大きな影響を与える判断を示しました。
この事案では、ある非公開会社において董事長(代表取締役)が取締役会を招集した際、法定の7日前の通知期間を遵守せず、かつ監察人に対して書面による通知を行いませんでした。その後の株主総会決議の効力が争われましたが、最高法院は以下の法理を示しました。
まず、取締役会の招集手続における瑕疵(通知期間不足や監察人への通知漏れ)は、あくまで会社の内部的意思決定機関における手続違反に過ぎないと位置づけました。その上で、取締役会が形式的に開催され、株主総会の招集が決議されている以上、それは招集権限のない者(無権限者)による招集とは区別されるべきであるとしました。取締役会決議の瑕疵により直ちに株主総会決議を当然無効とすることは、法律関係の安定を著しく害するため、このような瑕疵ある取締役会決議に基づいて招集された株主総会の決議は、会社法に基づく取消しうる決議に該当すると判断しました。つまり、決議の日から30日以内に訴えによって取り消されない限り、有効に存続することになります。
この判決は、会社側の法的安定性を保護する方向への転換を意味します。日本企業にとっては、万が一台湾子会社の取締役会招集手続に不備があったとしても、即座に全ての行為が無効となる最悪の事態は回避される可能性が高まりました。しかし取消事由となることに変わりはなく、30日以内に提訴されるリスクは残存するため、監察人を含む全役員への適法な通知を徹底することは、依然としてコンプライアンスの最重要事項です。
台湾における株主総会招集通知の期限と計算方法
取締役会で株主総会の開催が決定された後、株主に対して招集通知を発出します。ここでの通知期間は、会社の種類(公開・非公開)および総会の種類(定時・臨時)によって異なり、日本法よりも長期の期間が設定されている点に最大の注意が必要です。
具体的な通知期限について、非公開会社の定時総会では20日前、臨時総会では10日前の通知が必要です。これに対し日本では原則1週間前(定款短縮可)となっています。公開会社の場合は定時総会で30日前、臨時総会で15日前が求められ、日本の原則2週間前と比較しても長くなっています。
台湾の非公開会社における招集期間は、日本の非公開会社(取締役会設置会社で1週間)と比較して著しく長く設定されています。日本本社が台湾子会社の役員を緊急に交代させたい場合、日本では最短1週間(定款で短縮すればさらに短期間)で臨時総会を開催可能ですが、台湾では最低でも10日前の通知が必要です。さらに、通知の発送日と会日は期間計算に算入されない(中10日等の解釈)ことが一般的であるため、実質的なリードタイムはさらに長くなります。
このタイムラグは、緊急時の機動的な組織再編や人事介入における障害となり得ます。日本企業の法務担当者は、台湾子会社のスケジュール管理において、日本の感覚にプラス2週間程度の余裕を持たせることが不可欠です。全株主の同意がある場合、招集手続を省略して総会を開催できるかどうか(書面決議等の活用)については、定款の定めや会社法の規定を確認する必要があります。取締役会の書面決議は認められていますが、株主総会の招集手続省略については慎重な解釈が必要です。
台湾における招集通知の記載事項と臨時動議の禁止
招集通知には、日時、場所のほか、会議の目的事項を記載しなければなりません。ここで極めて重要なのが臨時動議の禁止規定です。台湾会社法では、特定の重要事項については招集通知にその主要な内容を列挙・説明しなければならず、当日の臨時動議として提出することを禁止しています。
臨時動議禁止の対象となるのは、取締役および監察人の選任または解任、定款の変更(商号変更や事業目的の変更を含む)、会社の解散・合併・分割などの組織再編、全事業または主要な資産の譲渡、資本減少(減資)・公積金の資本組入れ(株式配当)・準備金の現金配当、取締役の競業避止義務の免除などです。
この規定は、株主総会当日に不意打ち的に重要議案が提出され、十分な情報を持ち合わせない株主が不利益を被ることを防止するためのものです。実務上よくあるミスとして、株主総会の当日に「ついでに定款の一部を変更しよう」「余剰金の一部を配当しよう」といった提案が出されるケースがあります。これらが招集通知に記載されていなければ、たとえ全会一致であっても手続違反のリスクを負うことになります。全株主出席の総会であれば瑕疵が治癒される余地はありますが、原則としては厳格な運用が求められます。
台湾における基準日と株主提案権
株主総会での議決権を行使できる株主を確定するため、基準日の設定と株主名簿の閉鎖が行われます。定時株主総会の場合は会日の60日前から、臨時株主総会の場合は会日の30日前から名義書換が停止されます。
また、公開発行会社に限り、発行済株式総数の1%以上を保有する株主は、定時株主総会に対して議案を提案する権利を有しています。会社は株主総会の招集通知を発する前に、株主提案を受け付ける期間(10日間以上)を公告し、要件を満たす適法な提案については原則として議案に含めなければなりません。提案内容は300文字以内に制限されています。
台湾におけるデジタル時代の株主総会:バーチャル開催と電子投票

COVID-19パンデミックを契機として、台湾の会社法制はデジタル化へと大きく舵を切りました。2021年の会社法改正によりバーチャル株主総会の開催が明文で認められ、その後の実務定着が進んでいます。
台湾におけるバーチャル株主総会の形態と法的根拠
台湾会社法および関連規則により、株主総会の開催形態は三つに分類されています。物理開催は伝統的な特定の場所に株主が集まる形式です。ハイブリッド型は物理的な会場を設けつつ、ビデオ会議システム等を通じたオンライン参加も認める形式です。バーチャルオンリー型は物理的な会場を設けず、完全にオンライン上でのみ開催する形式です。
台湾の非公開会社における導入要件
日本企業の現地法人の多くが該当する非公開会社において、バーチャル総会を開催するための要件は比較的柔軟です。まず定款にその旨を定める必要があります。定款に規定があれば、個別の総会開催については取締役会決議によって決定できます。ビデオ会議を通じて参加した株主は、法的に親しく出席したものとみなされます。
未だ定款にバーチャル開催の規定がない日本企業の子会社は、次回の株主総会において定款変更を行い、この条項を追加しておくことを強く推奨します。これにより、将来のパンデミックや台風等の災害時、あるいは日本本社からの出張が困難な状況下においても、機動的に株主総会を開催する法的基盤が整います。
台湾の公開会社における厳格な要件
公開会社の場合、株主数が多いことからデジタル・ディバイド(情報格差)への配慮やシステムの安定性が強く求められ、要件が厳格化されています。ハイブリッド型の場合は取締役会決議が必要ですが、バーチャルオンリー型の場合はさらに取締役会の特別決議(取締役の3分の2以上が出席し、その過半数の賛成)が必要です。また証券集中保管事業(TDCC)等の認定プラットフォームを使用し、株主が質問や投票を行うための適切なシステムを提供しなければなりません。
台湾における電子投票と電子署名法の改正
台湾では株主総会の議決権行使における電子化も進んでいます。特に公開会社では電子投票の導入が義務付けられているケースが多く、TDCCが運営するプラットフォームが広く利用されています。
2024年5月に改正された台湾電子署名法は、電子署名および電子文書の法的効力をより明確化し、行政手続や民間取引における利用促進を図る内容となっています。もっとも、株主総会における委任状の勧誘および行使については、会社法のみならず証券取引法および金融監督管理委員会(FSC)の関連規則が優先的に適用されます。特に公開発行会社における委任状制度は、委任状の取得方法や様式、提出手続について詳細な規制が設けられており、電子署名法改正によって直ちに全面的な電子化が自由化されたわけではありません。したがって、委任状の電子的取得や提出の可否は、FSCの最新通達や実務運用を個別に確認する必要があります。
日本でも場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー型)が可能となりましたが、経済産業大臣および法務大臣の確認を受ける必要があり、導入のハードルは高いと言えます。台湾の非公開会社は定款変更のみで導入可能であり、この点では制度設計の柔軟性において台湾が一歩リードしていると言えるでしょう。
台湾における決議要件と投票制度:支配権維持のための核心
株主総会における決議が成立するための要件(定足数と賛成数)は、日本法とは異なる独特の計算式が採用されています。合弁事業において経営の主導権を確保するためには、これらの数字を正確に把握しておく必要があります。
台湾における普通決議
一般的な議案(財務諸表の承認、配当の決定など)に必要な要件は、発行済株式総数の過半数を代表する株主が出席し、その出席株主の議決権の過半数の賛成を得ることです。
台湾会社法には、日本法にはない「仮決議」というユニークな制度があります。定足数が過半数に満たない場合でも、発行済株式総数の3分の1以上の株主が出席していれば、出席株主の過半数の賛成により仮決議を行うことができます。この仮決議を全株主に通知し、1ヶ月以内に再度株主総会を招集して、再び3分の1以上の出席かつ過半数の賛成を得れば、その仮決議は正式な決議として成立します。これは、株主の無関心等により定足数を満たすことが困難な場合に、会社の意思決定が停滞することを防ぐための安全弁です。
台湾における特別決議
定款変更、解散、合併、重要資産の譲渡などの重要事項には特別決議が必要です。台湾法の特別決議要件は、出席率に応じてハードルが変動する二段階方式を採用しています。原則として発行済株式総数の3分の2以上が出席した場合は出席株主議決権の過半数の賛成で可決されます。例外として発行済株式総数の過半数のみの出席であれば、出席株主議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。
日本の特別決議は、過半数の出席かつ出席者の3分の2以上の賛成が原則です。台湾では、多くの株主(2/3以上)が集まれば過半数の賛成で決めてよいが、半数程度しか集まらなければ圧倒的多数(2/3以上)の賛成が必要という論理構成になっています。台湾の方が定足数の要件が厳しく、賛成率の要件が出席率によって変動するという特徴があります。合弁契約書において拒否権条項を設計する際には、この法定の数値基準を念頭に置く必要があります。
台湾における取締役選任と累積投票制度
日本企業が最も警戒すべき台湾会社法の特徴の一つが、取締役選任における累積投票制度の強制です。各株主は、持ち株数×選任すべき取締役の人数に等しい議決権(選挙権)を持ちます。株主は、この票数を一人の候補者に集中して投じることも、複数の候補者に分散して投じることもできます。日本の会社法でも累積投票制度は存在しますが、定款で排除することが認められており、実務上ほとんどの日本企業が定款で排除しています。台湾会社法では公開発行会社においてはこの累積投票制度は原則強制に近いですが、非公開会社では排除可能です。
この制度は少数株主保護のために設計されています。取締役を3名選任する場合、発行済株式の26%程度を持つ少数株主は、自分の持ち票を特定の候補者1名に集中させることで、確実にその候補者を取締役として送り込むことができます。日本企業が台湾で合弁会社を設立し51%の過半数出資をしたとしても、累積投票制度の下では取締役のポストを独占することはできず、49%を持つ現地パートナーに取締役のポストを一定数確保されることになります。これは取締役会の支配権構成に直結するため、事前のシミュレーションが不可欠です。
台湾における決議の瑕疵と紛争解決:最新の司法判断

株主総会の決議に瑕疵があった場合、その効力を争う訴訟類型として決議取消の訴えと決議無効・不存在確認の訴えが存在します。
台湾における決議取消の訴えと異議申立て義務
台湾会社法第189条に基づき、株主総会の招集手続または決議方法に瑕疵がある場合、株主は決議の日から30日以内に決議取消の訴えを提起できます。 ただし、判例実務(近時の知的財産及び商業法院112年度商訴字第42号判決等)では、総会に出席した株主については、その場で具体的な異議を述べた者に限り、取消訴訟の提起を認めるという厳格な立場をとっています。したがって、後日瑕疵に気づいたとしても、総会の現場で挙手し、「招集手続に違反がある」等の異議を明確に述べ、それを議事録に記録させていなければ、訴権を失うリスクが高い点に留意が必要です。
日本企業への教訓として、台湾子会社の少数株主として総会に出席する場合は、会社側の手続に不備があると感じたらその場で異議を述べ、議事録に残すよう要求しなければなりません。逆に会社側として総会を運営する場合は、議事進行において異議の有無を確認し、異議が出なかった事実を議事録に明確に記録することで、後の訴訟リスクを遮断できる可能性があります。
台湾における瑕疵の連鎖と取締役会決議
前述の最高法院判決で触れた通り、取締役会招集手続の瑕疵は株主総会決議の取消事由にはなり得ますが、当然無効事由ではありません。これに加えて、上記IP法院の判決理屈を組み合わせると、以下のようなシナリオが想定されます。
取締役会招集手続にミスがあったとしても、その後の株主総会に出席した株主がその場で異議を述べなければ、最高法院判決により決議は取消しうるにとどまり、かつIP法院判決により取消訴訟も提起できないため、実質的に決議の効力が確定し、会社側の勝訴となる可能性が高いということです。最新の判例動向は、手続の瑕疵を形式的に捉えてすべてを無効にするのではなく、株主の実際の行動(異議の有無)や法的安定性を重視する傾向にあります。
台湾進出企業への実務上の提言
以上の分析に基づき、台湾に進出する日本企業が採るべき具体的なアクションプランを提言します。
台湾子会社の定款の戦略的見直し
台湾子会社の定款は、設立時に経済部の標準雛形をほぼそのまま使用している例が少なくありません。しかし非公開会社であっても、株主総会をバーチャル形式またはハイブリッド形式で開催するためには、会社法第172条の2等に基づき、定款にその旨の根拠規定を置くことが前提となります。将来のパンデミックや自然災害、日本本社からの渡航制限等に備え、平時の段階で定款を見直し、オンライン開催条項を整備しておくことが実務上重要です。
また、2018年改正会社法により、一定の要件の下で取締役1名のみを置く体制や、非公開会社において監察人を置かない設計も可能となっています(会社法第128条の1、第216条関係)。役員数を適切に設計することで、取締役会招集通知(第204条)における通知漏れリスクを構造的に低減する効果が期待できます。さらに、定款の定めにより期中配当(半期配当等)を行うことも制度上可能であり(第228条の1等)、日本親会社への資金還流の柔軟性を高める観点からも、定款の戦略的見直しを検討する価値があります。
台湾における株主総会運営チェックリスト
次回の株主総会に向けて、会社区分の確認として、自社が非公開会社か、それとも公開会社の規制を受けるかを確認します。スケジュールについては、定時株主総会の場合、会日の20日前(公開会社なら30日前)までに招集通知を発送できるかを検討します。取締役会手続として、総会招集を決める取締役会について7日前までに全役員(監察人含む)に通知したかを確認します。
通知内容については、役員選任、定款変更、増減資などの重要議案がすべて招集通知に記載されているかを点検します。議決権計算として、累積投票制度が適用される役員選任において票読みが正確かを確認します。当日のシナリオでは、議長(董事長)のシナリオに異議の有無を確認するセリフが含まれているかを検討します。
現地専門家との連携
台湾の会社法制は、条文の文言だけでなく、経済部の解釈通達や裁判所の判例によって実務が形成されています。本記事で解説した内容は一般的な指針であり、個別の事案においては最新の解釈や特例措置が適用される可能性があります。特に株主間の対立が予想されるケースや、大規模な組織再編を伴うケースでは、早い段階で台湾の弁護士や会計士等の専門家と連携し、緻密な戦略を構築することが不可欠です。
まとめ
台湾におけるコーポレートガバナンスの実務は、日本法との類似性ゆえに分かったつもりになりやすい領域です。しかし招集通知の期間、決議要件の二段階構造、累積投票の強制、そして瑕疵を巡る司法判断の変遷など、細部には決定的な違いが存在します。
モノリス法律事務所と椽智商務科技法律事務所は、日本と台湾、双方の法制度に精通したクロスボーダー・チームとして、日本企業の台湾事業における法的リスクを最小化し、その成長を支援してまいります。本記事が皆様の台湾ビジネスにおける羅針盤の一助となれば幸いです。
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