台湾の法人税と営業税(VAT):日本企業が押さえるべき税務の基本

台湾の法人税と営業税(VAT):日本企業が押さえるべき税務の基本

台湾は地理的な近接性と歴史的な背景から日本企業にとって最も親和性の高いビジネスパートナーの一つです。しかしその法務・税務環境は日本と大きく異なる側面を持っています。特に税務実務においては、日本法が実質課税の原則を重視するのに対し、台湾では形式的要件の厳格な充足が求められる場面が多々あります。

統一発票(GUI)という独自のインボイスシステムや、企業の内部留保に対して直接課税を行う未分配利益税など、日本の常識のみで判断すると予期せぬ追徴課税や資金流出を招くリスクが存在します。

本記事では日本企業の経営層および法務・財務担当者を対象に、台湾税務の三大柱である法人税(営利事業所得税)、未分配利益税(保留盈余税)、営業税(VAT)について、その法的構造と実務上の重要論点を詳説します。モノリス法律事務所と椽智商務科技法律事務所の連携により、台湾現地の最新の行政解釈や判例動向を踏まえた実践的なコンプライアンス情報を提供します。

台湾における税務の三層構造

台湾の税制を理解する上での出発点は、企業の経済活動に対して課される税が所得、留保、消費の三つの層で構成されていることを認識することです。

第一に法人の獲得した利益に対して課される営利事業所得税(法人税)があります。第二にその利益を配当せず社内に留保した場合に課される未分配利益税が存在します。これは日本の同族会社に対する留保金課税とは異なり、原則として全法人に適用される台湾独自の制度です。第三に取引の都度発生する営業税(VAT)があり、これは日本の消費税に相当します。しかしその捕捉システムは世界でも類を見ないほどデジタル化され、かつ厳格に運用されています。

日本企業が台湾現地法人を設立する場合、あるいは支店を設置する場合、これらの税目がどのように連動し、最終的な実効税率やキャッシュフローにどう影響するかを総合的にシミュレーションする必要があります。2025年現在、台湾政府はデジタルトランスフォーメーションを税務行政にも強力に推進しています。電子発票(eGUI)の全面義務化やCFC(タックスヘイブン対策)税制の施行など、コンプライアンス環境は急速に変化しています。

台湾の法人税(営利事業所得税)の制度設計と実務

台湾の法人税(営利事業所得税)の制度設計と実務

台湾の法人税にあたる営利事業所得税は、所得税法に基づき台湾国内に主たる事務所を有する営利事業(居住者法人)の全世界所得に対して課税されます。税率は累進構造をとっていますが、実質的には多くの日本企業現地法人にとって一律20%のフラットタックスとして機能しています。

2025年度の法人税率構造

課税所得金額が12万台湾ドル以下の場合は免税となります。12万台湾ドル超から50万台湾ドルまでの場合は税率20%が適用されますが、税額は課税所得の12万台湾ドル超過分の半額を上限とする軽減措置があります。50万台湾ドル超の場合は課税所得全額に対し20%が適用されます。

計算構造自体は日本の法人税と類似していますが、最大の違いは損金算入(費用計上)の厳格さにあります。台湾の税務調査において最も頻繁に否認されるのが経費の実在性と事業関連性です。原則として統一発票(GUI)という政府公認の証憑がなければ費用として認められません。

交際費の扱いに関する注意点

特に注意を要するのが交際費の扱いです。日本では中小企業に対して定額の控除枠がありますが、台湾では売上高や仕入高に応じた限度額計算しか認められていません。その枠を超えた支出は全額損金不算入となります。また輸出業務を行う企業に対しては、外貨獲得総額の一定割合を追加の交際費枠として認める特別措置があり、輸出志向型の台湾経済を象徴する制度となっています。

実質的管理場所(PEM)の概念

日本企業が留意すべきもう一つの点は実質的管理場所の概念です。登記上の本店がケイマン諸島などのタックスヘイブンにあったとしても、実質的な経営意思決定が台湾で行われていると認定された場合、その法人は台湾の居住者法人とみなされ、全世界所得に対して課税されるリスクがあります。これはクロスボーダーな組織再編や持株会社設立の際に慎重な検討を要するポイントです。

台湾における未分配利益に対する課税(保留盈余税)のメカニズム

日本企業にとって最も馴染みが薄く、かつ資金計画に直接的なインパクトを与えるのが未分配利益税です。これは法人が獲得した税引後利益のうち、翌年度末までに配当されなかった部分に対して一律5%の追加課税を行う制度です。

この制度は企業が利益を過度に内部留保することを抑制し、株主への配当を促すとともに、再投資への還流を目的としています。計算の基礎となるのは会計上の税引後当期純利益です。ここから法定準備金(純利益の10%)や実際に支払われた配当額などを控除した残額が課税対象となります。

未分配利益税の計算と控除項目

未分配利益税の課税対象となる基礎は、会計上の当期税引後純利益を出発点としつつ、税法上の調整を加えた未分配利益額です。減算項目としては、過去の欠損金の補填に充当した金額、会社法上の法定準備金として積み立てた金額(原則として当期純利益の10%)、株主に実際に分配された現金配当および株式配当等が控除されます。

また、一定の要件を満たす設備投資等については、関連法令や行政解釈に基づき、未分配利益の算定上考慮される場合があります。これらの調整後の未分配利益額に対して、一律5%の税率を乗じて未分配利益税額が算出されます

実質投資による控除の活用

未分配利益税の実務において重要となるのが、企業が行う実質的な設備投資をどのように位置付けるかという点です。台湾では、一定の要件を満たす設備投資や事業用資産への支出について、関連法令や税務当局の行政解釈に基づき、未分配利益の算定上考慮される余地があります。対象となり得る投資には、生産設備や事業用建物の取得、業務効率化を目的としたソフトウエアやITシステム、各種ハードウェア設備等が含まれます。

日本企業の台湾子会社が工場の増設やデジタル化投資を行う場合、配当による利益還流、内部留保に対する未分配利益税の負担、将来成長を見据えた再投資という三つの選択肢を比較検討することになります。単に未分配利益税の5%を回避するという視点にとどまらず、投資計画と税務処理を事前に整理し、グループ全体のキャッシュフローと実効税率を踏まえた資本政策を構築することが実務上重要です。

台湾の営業税(VAT)と統一発票システムの鉄則

台湾の営業税(VAT)と統一発票システムの鉄則

台湾の営業税(VAT)は日本の消費税と同様の付加価値税ですが、その課税・控除の実務は統一発票(Government Uniform Invoice:GUI)と呼ばれる公式インボイス制度を前提に運用されています。GUIは単なる請求書ではなく、発票番号を政府が一元管理し、発行状況を通じて取引の実在性を把握することで、脱税や架空取引を防止する役割を担っています。

形式要件の厳格な運用

日本企業の実務担当者が特に留意すべき点は、営業税実務において形式要件が厳格に運用されていることです。統一発票の記載内容にわずかな不備がある場合でも、仕入税額控除が認められないほか、状況によっては行政上の指摘や処分の対象となることがあります。

また、電子インボイス制度に関連して、台湾では政府が定める標準フォーマット(MIG 4.0)に基づく統一発票データの送信・保存・管理が厳格に求められています。MIG 4.0 は現行の標準規格として広く利用されており、従来規格は2025年末までの移行期間が設けられていますが、2026年以降は新フォーマットへの完全移行が予定されています。これに伴い、データ送信期限や正確な情報提供といった手続要件への適合が重要となっており、システム対応の遅れや要件不備は税務上の指摘や罰則の対象となる可能性があります。

仕入税額控除ができない取引

台湾の営業税法第19条は特定の物品・サービスについて仕入税額控除を明示的に禁止しています。日本の感覚で「事業に使ったから控除できる」と考えて処理すると、税務調査で直ちに指摘される項目です。

営業税(VAT)の仕入税額控除に関しては、取引が事業活動と関連していても控除が認められない類型が存在します。具体的には、取引先に対する接待飲食や贈答品など、いわゆる交際費に該当する支出に係るVATは、実務上、原則として仕入税額控除の対象外とされています。また、従業員の慰安旅行や私的消費性の強い福利厚生に関連する支出についても、同様にVAT控除は認められません。さらに、事業者が自社使用を目的として取得またはリースする9人乗り以下の乗用車については、その購入費用やリース料に含まれるVATは控除対象外とされるのが一般的です。

これらの項目については会計システム上でVATコードを適切に設定し、誤って控除申請を行わないよう自動化された管理体制を構築することが推奨されます。特に、交際費に関するVATは、法人税法上の損金算入限度額の計算とは別に、営業税法上そもそも控除が認められないという二重の制限がかかっていることを理解しておく必要があります。

まとめ

台湾の税務環境は20%という比較的低い法人税率の裏側に、厳格な形式要件と独自の追加課税制度を有しています。日本企業が台湾で成功するためには単に税率を比較するだけでなく、統一発票(GUI)の適切な管理体制を現場レベルで徹底することが不可欠です。また未分配利益税やCFC税制といった特殊な制度を織り込んだ資本政策を策定することも重要です。

特に税務当局のデジタル化は年々高度化しており、電子発票データの分析を通じて異常な取引や架空経費の計上は即座に検知されるようになっています。税務調査による否認リスクを最小化するためには、取引の開始段階から契約書と証憑書類(インボイス)、そして実際の資金・物の流れを完全に一致させておく証拠化のプロセスが重要です。

モノリス法律事務所と椽智商務科技法律事務所は、日台双方の法制度に精通した弁護士と専門家チームにより、現地法人の設立から日々の税務コンプライアンス、複雑な税務訴訟に至るまで日本企業の台湾ビジネスを一貫してサポートできる体制を整えています。

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